民営化という名の労働破壊

民営化という名の労働破壊―現場で何が起きているか
前半、郵政民営化の中で職員達が悲惨な状況に陥っていく様子がレポートされている。
これでも、「オレたちの状況の方がもっと非道いぜ」と思う人もいるかもしれない。
しかし、後半になると民営化の余波は職員に留まらず、非正規職員、下請け、同業者、異業者、消費者にまで広がっていく様子が映し出される。
そして、その様子は郵政だけのことではなく、既に鉄道、航空、介護など様々な現場で起こっていることの繰り返しであることが浮かび上がる。

05年9月の衆議院選挙。必死で働いても給料は下がり続け、いつクビになるか分からない労働者の閉塞感の矛先は、ぬるま湯につかっているように見えた郵政職員に向かった。彼らは、郵政民営化の大合唱に乗じることで溜飲を下げたつもりなのかもしれない。
公的部門の民営化が無条件にもてはやされる背景にも同じ心理が透けて見える。でも、彼らはなぜ、他人=公務員を引きずりおろすのではなく、自分たちの待遇を引き上げよと主張しないのか。狭い了見のバッシングの代償は、将来、必ず自分たちが支払わされることになる。

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構造改革」とか、「官から民へ」とか、「小さな政府」とか、「規制緩和」とか、「減税」とか、
結局のところ、国や自治体が国民(特に社会的弱者)の面倒を見ないと言っているのに近い。
その先に待っているものは既に示されている。