「終わりなき日常」今は 社会学者・宮台真司さんに聞く

――周囲の人との絆を築いたり、依存による危険を減らしたりするため、何をすべきですか。
「社会のスタイルを『統制と依存』から『自治と参加』へ切り替えていくことです。日本では17世紀(江戸期)以降、お上による統制とシステムへの依存が社会統治のモチーフでした。そこから脱し、共同体自治を進めるしかない」

後で「困難ですが、やっていくしかない」とも言っているが、各分野での専門性が進んでいる現代においては、専門知識の無い市民が『参加』の仕方を間違えるととんでもないことになる。例えば、農業という分野は非常に専門性が高いと思うのだが、「豪農既得権益を民衆に分配する」ことを謳い文句にして農地解放をした結果深刻な不作を招いた例は世界にいくらもある。

「はっきりしているのは、依存していても便利や快適は得られるけれど、便利や快適がどれだけ増えても幸福と尊厳は得られないこと。幸福と尊厳は、自分たちが自分たちをコントロールしている感覚が得られて初めて獲得できるものです」

さらには、「自分たちが自分たちをコントロールしている感覚」だけを植え付けて、実質的には独裁を行い、結果として「便利や快適」を奪うような政治家に気をつけなければならない。『自治と参加』に切り替えたつもりが、いつのまにか更に強固な『統制と依存』にすり替わる危険がある。
『統制と依存』が危険なのと同様に、『自治と参加』にも危険はある。